2006-01-01から1年間の記事一覧

もう一人のチャーリイ・ゴードン

おお、最初と最後の話がリンクしているなんていう技を効かせてくるあたりに、短編の名手の気概を感じます。「芦屋家の崩壊」が好きかな。ダウナーになっているときに読むと、効果倍増。もう一人のチャーリイ・ゴードン―梶尾真治短篇傑作選 ノスタルジー篇 (…

猫の手冒険隊、集結!

ようやくイラストが良くなった……。好みの問題だと言われれば其の通りですが、最近の絵柄はどうにも良くなかった、つか合わなかったので、集める気になりませんでした。これは好きです。プレイヤーのこなれた感じも好きだし、マスターとプレイヤーがお互いに…

マルドゥック・ヴェロシティ 1-3

バッドエンドじゃないけど切ない終わりを迎えた物語。不幸の中から最も幸福に近いものを捜し求める、その行為の繰り返しだったのかな。『SFマガジン』の冲方のコメントを読み返そうかなと思います。マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)作者: 冲方…

狼と香辛料 3

あーもーしょーがねーなー、と言いいつつ読み終わりました。伏線とか若干どうでもよくなる話ですね。感情移入、とまでは言いませんが、入り込んだ状態で読むと楽しいかもしれません。オビの一言が、案外緊迫した場面で言われる言葉なのが意外でした。私の顎…

シャドウ

叙述叙述叙述、と十回噛まずに言って見ましょう。○○を見たから気まずかったて、そらわかりませんわ。視点の入れ替わりが見事なので、その点だけをピックアップして読んでもいいんじゃないかと思います。揺さぶりを掛けてくるのも上手いですよね。うん、でも…

歯と爪

表紙折り返しはアンフェアじゃないのか――! まあいいです、楽しかったから。歯と爪 (創元推理文庫 163-2)作者: ビル S.バリンジャー,大久保康雄出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1977/07/15メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (31件) を見…

ららら科學の子

過去と現在を、対比するでもなく、並べているのが要かな。読みにくいことはないし、最初の数十ページを読んだ時点で、物語としての起伏を求めることが相応しくない作品だとわかったので、楽しく読めました。読み終わってからタイトルを噛み締めると、寂寥感…

削除ボーイズ0326

序盤、90ページくらいまでは、地の文が合わなくて四苦八苦しました。そのあと一日置いて読んだら、まあ驚くほどスムースに文章が入ってくること。「時間を削除する」よりも、「3分26秒の出来事を削除できる」という方が正しくないかな。しかもこの時間、短く…

七王国の玉座 1〜5

あー忘れてた。書影が4巻なのは仕様です。エダードがぁぁぁ、とか今一頭悪いこと言いますが、アリアが一番いいよね。アリアが大狼に出会えるのはいつの日か。視点が章ごとに変わるのですが、常に新しい印象を受けるので、読んでいて飽きることがないです。主…

ブラバン

「ええの買うた?」母が訊く。 買物から帰ってきた者に対する挨拶のような言葉なのだが、その日ばかりは、答えようとする咽に熱い塊がこみ上げてきた。「いちばんええのを買うた」 柏木さんからのチョコとかにいちいち「うん、失敗しとった」なんて言うのが…

のだめカンタービレ 16

もうずっと怖いですから―――― ↑ここ最強ね。この一節のために巻を通しての伏線は張られていたのだと思います。ある意味壮大な仕掛けですね。ああ、こんなこと書いたら、読んだ人が楽しめなくなるかもしらん。でも書いた。のだめカンタービレ(16) (KC KISS)作…

ヨイコノミライ 完全版 1〜4

怖ぇー。ホラーなんぞを読むよりよっぽど怖いんではないでしょうか。解決していない枝は沢山あると思いますが、あーだこーだと想像する余地が、また怖い方向に向かいます。うん、まあ、あんまり受けなさそうだなとは思いますが、これはこれで必要な作品だな…

放浪息子 5

ようやく五巻ゲットですよ。中学生になって新しい登場人物を加え、賑やかになりましたね。好きとか嫌いとかやってる彼らが非常に微笑ましい、とか思っている自分がどうにもオッサンになっているように思えて切なかったり。 「ちーちゃんはケンカ強いんだぞぅ…

殺し屋1 1〜10

この漫画を変態の漫画と言ってしまうのは簡単だと思うのですが、そうとしか言い様が無いという感触を得ているのも事実。とは言え、変態なりの理屈とでも言うべきものをしっかりと描いているあたりに、作者がどれだけ変態に入れ込んでいるのか分かりますね。…

折角の休みなのに感想をひとつも上げないというものどうかと思ったので。

ダークエルフの口づけ

ん、続編があること前提だとしても、伏線、と言うよりも2巻以降で明かされる秘密を仄めかす文章が多すぎ。単発で楽しめないシリーズ物ですね。主題となった都市はまあ悪くないと思うけど、権謀渦巻く都市って感じじゃないなあ。ほかの都市との差別化としては…

抑制された幸せ

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)作者: 飛浩隆出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2006/09/01メディア: 文庫購入: 32人 クリック: 186回この商品を含むブログ (178件) を見る飛浩隆、良い表紙をつけてもらえたな、よかったな、とつくづく…

少し変わった子あります

森博嗣が『注文の多い料理店』を書きましたよ、と説明すると一番正確じゃないかな。淡々と進められていく物語の中に森的ないつものやつが挟み込まれていて、これがまた毎度毎度呻きたくなるほど羨ましい。自分には無いからこそ羨ましい。僕は人が、というか…

太陽の塔

これに影響されてしまった現役学生は、きっと華やかさとは決別したような大学生活を送ることになるんだろうなあ。悪いとは思いませんが、もっと華のある生活もいいと思います。ま、僕はどっちかというと、影響されるまでもなく、この本みたいな学生生活でし…

ぼくだけの☆アイドル

ニートじゃねぇぇぇぇ! ニートというかヲタに関する中途半端な知識で書き始めたってのが丸分かり。最後のオチにしても、もっとすっぱりと分かるんだから引っ張るなよ、と。グチグチ悩みまくる六本木のダイビングショップ店員の俊哉の方が面白くなりそうな気…

動物のお医者さん 文庫版1〜8

名作名作と言われているのは知っていましたが、読んだのは初めて。個性豊たかな登場人物が、それぞれ元気に動き回って大変楽しい作品でした。ハスキー犬が流行ったのも分かるなあ、ちょっと飼いたくなるもんなあ。「オレはやるぜ」のシーザーがいい。犬嫌い…

樹霊

<観察者>のシリーズならシリーズだと、最初に書いてくれよ創元さん。そんな理屈で樹が動いた理由を説明してしまうのか、とバカミスっぷりの一端を見せ付けられたような気もしますが、まあ、言うほどバカではなかったと思います。最後に犯人が喋り出すのは…

八月の熱い雨 奮闘記>

ベタなストーリーであるところに味があるものと判断します。もっと捻った話をつくるのも面白いと思いますが、このくらいの流れでいくのも一興かと。善意とか思いやりで構成された物語だよなあ。要は人情記を書きたいんでしょうね。もっと悪意がドロドロした…

ハチミツとクローバー 10

福岡では本日が公式の発売日デス。落ち着くところに落ち着く、こういう話があってもいいじゃないですか。爺さんたちが大活躍ですよ。青春様に乾杯じゃー。職場でハチクロ回して広めたりしましたな、そういえば。ふとしたときに読み返してはワキワキする作品…

ボトルネック

もしかして米澤穂信は、厭世しまくっているけど、それでも生きようとする人、そういうものを書きたいのかな、と思った。勘のいい女の子は、味方につけると幸せですよね。ああでもなあ、自分が生まれていなかったら、なんて痛いなあ。『ボトルネック』と聞い…

λに歯がない

最初から事件が起こっているなんて、森にしては珍しい展開ですね。となると、物語全体が謎解きのために費やされることになるので、まあそういうのが好きな人が楽しいんじゃないでしょうか。私は加部谷のはっちゃけぶりが好きなので。λに歯がない (講談社ノベ…

クビキリサイクル

発売当時に読めばよかったよ……。今となっては、西尾作品もいくつか読んでいるだけに、まだ作者に馴染んでいない文体が気になってしまった。順番に読むって、ときには大切ですね。クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)作者: 西尾維新,ta…

魂の駆動体

クルマと、自転車と、翼の物語。男の子なら読んでみなって。ここに描かれている一体感、疾走感への欲求は、きっとみんなが持っているものだと思う。魂の駆動体 (ハヤカワ文庫JA)作者: 神林長平出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2000/03/01メディア: 文庫 ク…

八月の路上に捨てる

ストーリーの予備知識がなかったため、これから結婚しようとする人にこの本を差し上げてしまい、大慌てしましたが、読み終わってみると、これは有りなんじゃないかと思い直しました。さっぱりとした仕上がりですね。あくまで私見ではありますが、人が離婚す…

独白するユニバーサル横メルカトル

数学への執着によって呼び起こされる結末が、割り切りのようなそうでないような、妙に清清しさを感じさせる「Ωの晩餐」、芸術が人を堕落させるものとされる世界で、最後に決まるキックが最高に気に入った「オペラントの肖像」、タイトルとそのアイデアが秀逸…