ブラバン

「ええの買うた?」母が訊く。
買物から帰ってきた者に対する挨拶のような言葉なのだが、その日ばかりは、答えようとする咽に熱い塊がこみ上げてきた。「いちばんええのを買うた」

柏木さんからのチョコとかにいちいち「うん、失敗しとった」なんて言うのが非常に好きです。こう、何と言うか、文系的な高校生活の楽しみ方というのに憧れています(現在形)ので、とても羨ましい一冊だと思います。読み終わってから、どの頁を開いて見ても、ぐうっと広がってくるようにして物語が湧き上がってくるので、迂闊に開けないという。まあ迂闊に開けないのは古処誠二の『ルール』と同じなので、悪い意味ではありませんから。これだけ登場人物がいれば、誰か一人くらいは気に入って戴けるのではないか、と思慮いたします。

ブラバン

ブラバン